住宅の新築を検討中の方ですと、「長期優良住宅」というキーワードを一度は目にしたことがあるはずです。
住宅の長寿命化やローンの金利優遇などのメリットに着目されがちですが、果たしてデメリットはあるのでしょうか?
今回は、長期優良住宅の基礎知識からメリット・デメリット、気になる疑問についてお話しします。
リフォーム・リノベーションについても解説しますので、これから新築住宅を建てる方はもちろん、今のお住まいを長持ちさせたい方も、ぜひ参考にしてください。
●長期優良住宅を後悔しないためにも、デメリットや建てた後のことまで、十分理解して決断しましょう。
●入沢工務店は、山梨にオフィスを構え“地元密着”をコンセプトに、スタイリッシュで快適な家づくりに励んでいます。
Contents
長期優良住宅とは?
「長期優良住宅」とは、長きに渡り状態を良好に保つための性能を備えた住まいを指します。
長期優良住宅認定制度 は、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅の建築・維持保全に関する計画を「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき認定するものです。平成21年6月4日より新築を対象とした認定が開始され、平成28年4月1日からは既存住宅の増築・改築を対象とした認定も開始されました。さらに、令和4年 10 月 1 日には既存住宅について建築行為を伴わない認定が開始されました。
(引用:国土交通省|長期優良住宅認定制度の概要について・新築版)
では、この「長く良好な状態で住み続けるための措置」とは、具体的にどのような事柄を指すのでしょうか?
ポイントは以下の通りです。
長期に使用するための構造・設備を持っていること
劣化対策として、劣化対策等級(構造躯体等)3級以上の性能を持ち、さらに構造種別ごとの基準をクリアしなければいけません。
3級を取得できる住宅の条件として、「住宅が限界状態に至るまでの期間が3世代以上となるための必要な対策」を行う必要があります。
具体的には、外壁軸組や土台の防腐・防蟻措置、浴室や脱衣室における一定の防水措置、地盤の防蟻措置を行っているかどうかが審査対象です。
そのほか、木造住宅で条件をクリアするためには、通気構造の採用や小屋裏点検口の設置、基礎の形式や高さなど、多くのポイントを押さえなくてはいけません。(参考:国土交通省|評価方法基準案(劣化対策)の各等級に要求される水準の考え方)
高い耐震性
一定以上の耐震性があることを証明するために、耐震等級(倒壊等防止)等級2をクリアする必要があります。(その他の条件をクリアすれば等級1でも良い)
数百年に一回は起こりうる大地震などに対して、力を受けても人の命が奪われるような倒壊が起こらないことが条件です。
地震力だけではなく、暴風、積雪(多雪区域のみ)についても耐力がなくてはいけません。(参考:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会|地震などに対する強さ)
高い省エネ性
断熱等性能等級5級・一次エネルギー消費量等級6級の基準をクリアしなくてはいけません。
断熱等性能等級5級は、2022年に新設され、「ZEH強化外皮基準に適合する程度のエネルギー削減が得られる対策を講じた住宅」相当を指します。
一般的にはZEH基準と呼ばれ、地域区分ごとにUA値(外皮平均熱貫流率)基準が定められています。
外皮平均貫流率とは、屋根・壁・床・開口部など外部と接している部分の“熱の通しやすさ”を示し、数値が低いほど断熱性が高いことを意味します。
一方、一次エネルギー消費量等級は、その住宅で消費するエネルギー量に関する指標で、BEI(設計一次エネルギー消費量 ÷ 基準一次エネルギー消費量)の数値で評価されます。
値が小さいほど省エネ性が高いことを意味します。
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居住環境等への配慮
その家を長きに渡り使い続けるには、地域との調和や近隣への配慮が欠かせません。
そのため、長期優良住宅の認定を受けるためには、地区計画や景観条例、その他街並みに関する決まりを守っている必要があります。
地域によっては、家の形状や使用できる色彩が限られている場合もありますので、これらも必ず確認しなくてはいけません。
一定以上の住戸面積確保
一戸建て住宅の場合は、住居面積が75㎡以上、なおかつ階ごとの床面積が40㎡以上(階段部分を除く)でなくてはいけません。
つまり、店舗併設住宅などの場合は、店舗部分の面積は除外しなくてはいけないということです。
維持保全計画の設定
長期優良住宅は、新築時に認定を受ければそれで終わりという訳ではありません。
長い期間良好な状態を保つためには、維持保全計画、つまりメンテナンスプランが欠かせず、認定を受けるためにはそれを提出・実行する必要があります。
維持保全計画の対象となるのは、家の寿命を特に左右する「構造耐力上主要な部分」「雨水の浸入を防止する部分」「給水又は排水のための設備」に関する部分です。
災害への配慮
地震以外の自然災害に対しても、備えておかなくてはいけません。
敷地が以下の地域内にある場合には、想定される被災に対して軽減措置・防止措置が求められる可能性があります。
- 地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域、土砂災害特別警戒区域等
- 災害危険区域等、津波災害特別警戒区域等
- 浸水想定区域、土砂災害警戒区域、津波災害警戒区域
- 浸水ハザードマップなどにおいてリスクが高いとされている区域
認定を受ける“6つ”のメリット
長期優良住宅の認定を受けるということは、長年住み続けられる住まいの機能を兼ね備えていることを意味します。
国土交通省が発表している既往調査研究等による木造住宅期待耐用年数を見てみると、長期優良住宅の認定を受けた住宅においては、100年超の可能性があるとされています。(参考:国土交通省|期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について)
三世代に渡って一軒の住宅を使い続けることは、決して無理ではないということです。
メリットはそれだけではありません。
では、それぞれ見てみましょう。
トータルの住宅コストを削減できる
高性能な長期優良住宅を建てる際には、一般的な住宅よりも高いコストがかかります。
また、きちんとメンテナンスを行うためにも、少なからず費用を想定しておかなくてはいけません。
しかし、二世代、三世代に渡り、一軒の家を住み継げば、世代当たりの住宅コストは大幅に削減できます。
その分浮いた費用を高性能設備機器の導入などに充てれば、より快適な生活が実現できるはずです。
環境に優しい
カーボンニュートラルやSDGsなどと大きく関係するのが二酸化炭素。
あまり実感がないかもしれませんが、住宅業界は多くの二酸化炭素と産業廃棄物を排出しています。
2階建ての木造住宅を一軒解体するだけで、4tトラック5〜10台ものゴミが出るのです。
また、住宅1棟を建てるのに、比較的環境負荷の少ない木造であっても、33,661kgもの二酸化炭素を排出します。
1人が一年に排出する二酸化炭素量は約320kg∼370kg程度と言われているので、その100倍以上に匹敵します。
そのため、一軒一軒の住宅の寿命が伸びれば、その分環境負荷を軽減できるのです。
税の特例措置を受けられる
政府は住宅の長寿命化を進めるために、長期優良住宅の建設を推奨しています。
そこで設けられたのが、諸税の特例処置です。
入居時期によって内容は異なりますが、以下の減税制度が適応されます。
所得税(住宅ローン減税)
どのような住宅を購入する場合でも適応されますが、長期優良住宅の認定を受けている場合は、控除対象限度額が3,000万円から5,000万円に引き上げられます。
※2023年12月31日前に入居した場合に適応
(参考:国土交通省|住宅ローン減税)
所得税(投資型減税)
標準的な性能強化費用相当額(上限650 万円)の10%分が、その年の所得税より控除されます。
※2023年12月31日前に入居した場合に適応
登録免許税
不動産登記をする際に納める登録免許税率が引き下げられます。
保存登記の場合: 0.15%から0.1%
移転登記(戸建住宅)の場合: 0.3%から0.2%
※2024年3月31日までに新築した場合に適応
固定資産税
減税措置の適用期間が、戸建住宅の場合は最長3年から5年に延長されます。
不動産取得税
課税標準額からの控除額が1,200万円から1,300万円へ引き上げられます。
住宅ローン金利の引き下げ
全ての住宅ローンが該当する訳ではありませんが、フラット35を利用する場合には、借入金利を借入開始から5年間、年0.25%引き下げられます。
また、フラット50の場合ですと、将来住宅を売却する際に、借入金利のままで買主へ住宅ローンの返済を引き継ぐことができます。
地震保険料が割引きされる
長期優良住宅の認定を受けるためには、高い耐震性が必要です。
そのため、認定住宅は地震保険が割引されます。
耐震等級2級 | 標準保険料より30%割引 |
耐震等級3級 | 標準保険料より50%割引 |
免震建築物 | 標準保険料より50%割引 |
様々な補助金が受けられる
コストの高い長期優良住宅の新築をサポートするために、政府が取り組んでいるのが、補助事業です。
それぞれ細かな要件は異なりますが、長期優良住宅相当の性能を兼ね備えていれば、補助金を受け取れる可能性があります。
上記の国が行っている事業以外にも、市町村などで運営している補助金もあります。(例:甲斐市省エネルギー住宅等普及促進事業費補助金)
ただし、補助金によっては登録された施工会社でなければ申請できないものもありますので、事前に確認してください。
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意外と知られていない長期優良住宅のデメリット
メリットばかりが注目される長期優良住宅ですが、事前に知っておくべきデメリットや注意点もあります。
これから紹介する点をしっかりと理解して、長期優良住宅の新築を検討してください。
認定を受けるためには費用と時間が必要
長期優良住宅の申請は、設計内容説明書や各種図面、性能計算書などの申請書類を揃え、“着工前”に登録住宅性能評価機関や所管行政庁へ提出し、審査を受けます。
認定されてからでないと着工できないため、どうしても入居までの期間が長引いてしまう点は否めません。
認定処理にかかる日数は条件によって7〜68日かかるため、施工会社と早めにスケジュールを立てましょう。(参考:長期優良住宅の普及の促進に関する法律)
申請自体の手数料は8,000円(一戸建ての場合)ですが、その他、登録住宅性能評価機関による技術的審査や住宅性能評価書の作成に別途費用が10〜30万円程度かかります。
建設コストが高くなる
高い耐震性・省エネ性や劣化対策を備えるためには、どうしても材料費・建設費が高くなってしまいます。
しかし、これらの目的は長期優良住宅の認定を受けるためだけのものではありません。
例えば、省エネ性を高めれば、住み始めてからの光熱費を削減できますし、劣化対策をとっておけば、建物のメンテナンスコストを軽減できるでしょう。
つまり、長い目で見れば、建設コストの高さはデメリットとは言い切れないということです。
定期点検・メンテナンスの継続が必須
長期優良住宅は、長く住み続けることが最大の目的です。
そのため、新築時に認定を受けて“おしまい”という訳にはいきません。
申請時に提出した維持保全計画に沿って、適切なメンテナンスを継続する必要があります。
認定の条件として、維持保全が必要となる期間は30年以上、その間の定期点検は10年以内毎です。
点検費用は住宅規模や会社にもよりますが、5〜10万円/回が相場です。
提出した計画に沿って点検やメンテナンスを行わなければ、認定を行った所管行政庁から改善命令が出されるだけではなく、最悪の場合は認定が取消され、それまで受けた税控除や補助金を返還しなくてはいけなくなるかもしれません。(参考:国土交通省|長期優良住宅の認定を受けられたみなさまへ)
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長期優良住宅の数はどのくらい?気になるQ & A 〜 リフォームや相続について
長期優良住宅は、その高い性能を公的に証明されるため、資産価値が高まることも期待できます。
そのため、年々認定棟数は増えており、全新築住宅における割合も上昇しています。
令和元年度 | 令和2年度 | 令和3年度 | |
認定を受けた戸建て住宅数 (全新築住宅における割合) | 107,389戸 (24.9%) | 100,503戸 (25.5%) | 118,289戸 (27.7%) |
これだけ普及が進んでいるため、長期優良住宅の建築を検討する方は多いですが、ここで多くの方が気になるのは将来のリフォーム・リノベーションや、相続について。
詳しくみてみましょう。
Q. 長期優良住宅はリフォーム・リノベーションできる?
認定を受けた住宅を将来リフォーム・リノベーションすることも想定できるでしょう。
結論から言うと、長期優良住宅の改修はできます。
ただし、その際には、軽微な改修であっても、必ず工事着手前に所管行政庁へ「計画変更認定」を申請しなくてはいけません。
維持保全計画を変更する際も同様です。
申請の際には、改修後の状態で基準をクリアしなくては認定取消となってしまうため、屋根や外壁など主要構造部の仕様を変える場合は、特に気をつけましょう。
(参考:国土交通省|長期優良住宅の認定を受けられたみなさまへ)
Q. 長期優良住宅を売却・譲渡・相続するとどうなる?
長期優良住宅を売却・譲渡・相続する場合には、通常の登記変更とは別に所有者の地位承継手続きをする必要があります。
忘れてしまうと認定が取り消される可能性がありますので、必ず速やかに申請しましょう。
所管行政庁(市区町村)によって申請方法は異なりますが、手数料がかからないのが通常です。
(参考:国土交通省|長期優良住宅のページ)
既存住宅の“長期優良住宅化”リノベーションもおすすめ
長期優良住宅として認定を受けられるのは新築住宅だけではありません。
平成28年4月1日からは既存住宅の増築・改築においても認定が始まりました。
リノベーションによって長期優良住宅と同等の性能を実現できた場合が対象です。
税控除や保険料引き下げなどのメリットも同等に得られますし、何より家を長寿命化させることができます。
「うちは古い住宅だから長持ちさせられない」と諦めるのは早いです!
ぜひ、長期優良住宅化リノベーションをご検討ください。
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まとめ|長期優良住宅は人にも環境にも優しい住まい
長期優良住宅は、長きに渡り住み続けられる性能を持つ住宅です。
建設コストやメンテナンス費用などの懸念点はあるものの、長期的視点でみると快適な生活を実現でき、さらに光熱費削減や生涯の住宅コストを削減できるというメリットもあります。
住宅の長寿命化は、廃棄物や二酸化炭素排出量の抑制につながる点も忘れてはいけません。
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