住宅雑誌やインテリア雑誌などを見ていると、スキップフロアのあるおしゃれな家を見かけませんか?
しかし、スキップフロアについて色々調べると「後悔した」「失敗した」というネガティブな言葉も…。
その原因は、メリットとデメリットをしっかりと理解せずに取り入れてしまったからです。
そこで、今回はスキップフロアのメリット・デメリットから導入する前に知っておくべき注意点とその対策について、詳しく解説します。
当社の施工事例も合わせて紹介しますので、マイホーム新築をご検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
●平面プランだけではなく、換気や空調についても配慮が必要です。
●デメリットを解消できる対策方法があるので、ライフスタイルに合わせて取り入れることが大切です。
Contents
「スキップフロア」とは?後悔する人が多いのはなぜ?
スキップフロアとは、階層の中間に設ける床のことで、通常の1階・2階などと比べると視覚や機能に変化が生まれます。
しかし、残念ながら住み始めてから後悔してしまう人は少なくありません。
では、その原因は何でしょうか?
最も多いのが、スタイリッシュなデザインに惹きつけられ、安易に取り入れてしまうケースです。
確かに、スキップフロアは空間が個性的になるため、施工事例をみると取り入れてみたくなる人も多いでしょう。
しかし、メリット・デメリットを十分に理解し、そこでどのような生活が送れるかをイメージしなくてはいけません。
また、設計士主導のプランニングで、勧められるがままに導入してしまうのも危険です。
スキップフロアに興味がある方は、これから紹介するポイントをしっかりと押さえて、間取りを検討してください。
失敗しないために知っておくべきメリットとデメリット
では、具体的にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
ここでは、主なポイントを解説します。
メリット
- 収納面積が増やせる
- 傾斜地の場合、土地の特性を生かしたプランニングができる
- 間仕切り壁がなくても、視線のレベル差で空間を分けられる
- インテリアデザインが個性的・スタイリッシュになる
- プランニングによっては固定資産税が安くなる場合がある
まず、基準の床レベルから数段上下することで、その床下や階段下に収納が設けられます。
ただし、クローゼットのように日常的に物の出し入れするのには少々不便です。
季節物などを保管する場所として活用しましょう。
建設予定地が傾斜地の場合も、スキップフロアは有効です。
通常、その土地が傾斜していると、スキップフロアを導入しない場合には大規模な造成が必要になります。
しかし、ある程度その傾斜に合わせてフロアレベルを設定すれば、造成費用が削減でき、工期も短縮できます。
そして、最も大きなメリットが「空間を緩やかに区切れる」という点でしょう。
間仕切り壁やパーテーションがなくても、スキップフロアによるレベル差によって、互いの視線高さがずれ、自然とゾーニングできます。
また、個室で区切る場合と比べると、音や気配が伝わります。
リビングやキッチンから様子がうかがえる場所に設ければ、お子さんの遊び場や勉強スペースとして活用するのもおすすめ。
開放的な部屋にしたい方や、子育て中、介護中の方は、ぜひ検討してみましょう。
スキップフロアは、設計や施工に手間がかかるため、あまり通常の建売住宅には採用されません。
そのため、インテリアを個性的にしたい場合や、おしゃれにしたい場合にもぴったりです。
一味違う間取りにしたい方は、一度スキップフロアを取り入れてみてください。
ちなみに、天井高が1.4m以下の空間は建築基準法上も税法上も床面積に加算されません。
そのため、自治体の判断によっては生活スペースの広さに対して固定資産税が安くなる可能性もあります。
ただし、全てのケースが該当する訳ではありませんので、必ずその土地の税法に詳しい税理士に相談しましょう。
デメリット
- 空間が連続して広がるため、空調効率が悪い
- 音や匂いが漏れやすい
- 建設費がかかる
- 上り下りが負担になる場合がある
まず、スキップフロアのある家では、空間が緩やかに連続する傾向が強いため、どうしてもエアコンなどの空調効率が下がってしまいます。
また、リビングに面していると調理の匂いが広がってしまったり、テレビなどの音も漏れやすいでしょう。
そして、最も懸念される点が「建設費」です。
単純な床構造の家よりも、どうしても手間がかかるため、建設コストは上がってしまいます。
これらの問題をクリアしたとしても、住み始めてみると上り下りが億劫で結局使わないスペースになってしまうケースも少なくありません。
デメリットを解消できる対策はある?老後も住み続けられるの?
個性的な空間が生まれる分、どうしても住み始めてからの生活がイメージできない人も多いはずです。
また、「デメリットがどうしても気になって建設に踏み切れない」と考えるかもしれません。
しかし、それぞれのデメリットについて対策方法はあります。
皆さんのライフスタイルに合うかどうかを吟味して、ぜひスキップフロアのある家を検討してみましょう。
理由① 空調効率が下がった
スキップフロアの魅力は、緩やかに空間を分けられる点です。
裏を返せば、空間が連続してしまうということになります。
そのため、通常のエアコンでは空調しきれず、光熱費が上がってしまうリスクも想定できます。
ただし、その解決策として、主に2つの方法があります。
- 高気密高断熱仕様の住宅にして、出来るだけ空調ロスを抑える
- 全館空調システムを導入する
これらの方法によって、どこの場所にいても室温が安定し、ヒートショック症候群の防止にもつながります。
ヒートショックとは急激な温度の変化によって血圧が大きく変動するなど、身体に大きな負荷がかかることで起こり、失神、不整脈などの症状が見られます。重症の場合は死に至ることもあります。持病がない健康な方にもヒートショックは起こります。
引用元:公益財団法人 長寿科学振興財団
理由② 各空間が狭く感じる
「収納スペースが増える」「間仕切る必要がなくなる」など、確かに空間を有効活用できますが、建設予定地が狭小地の場合には特に注意しなくてはいけません。
何故なら、スキップフロアで床を分断することで、広々とした空間を確保できない場合もあるからです。
取り入れる場所を考えなくては、あまりメリットを実感できず、むしろ圧迫感さえ感じてしまうでしょう。
後悔しないためには、リビングやホールなどの補助的空間として取り入れたり、子供の遊び場として利用する場合は、大人がくつろぐ場所と分けるなど、平面計画に工夫が必要です。
理由③ 料理の匂いが広がる
間仕切り壁を設けずにスキップフロアで区切るということは、匂いや音が漏れ伝わるということです。
特に、料理の匂いが気になるという人は多く、キッチンのフード(換気扇)だけではどうしても解消できません。
その場合には、「全館空調」を活用しましょう。
現在、建築基準法によって「計画的な換気(24時間換気や常時換気)」の導入が義務付けられているため、新築には十分な換気システムが導入されています。
しかし、「電気代が気になる」「音がうるさい」などの理由から、電源を切ってしまう人も。
それでは、全く意味がありません。
家全体の空気を常に入れ替えすることで、匂いの問題だけではなく、カビの発生リスクも軽減できます。
理由④ 上り下りが大変、老後が心配
多くの人が最も心配なのが、「老後に不便なのでは?」という点でしょう。
たしかに、無闇にスキップフロアを作ってしまうと、余計な段差が生まれて心身ともにストレスに感じるようになってしまいます。
将来的なバリアフリーが心配な方は、スキップフロアを“補助的”な空間として捉えましょう。
例えば、客間にすれば日常的にステップを上り下りする必要はありませんし、子供の遊び場や勉強スペースですと、当面の間は有効活用できます。
寝食に関わるスペースや水回りなどの最低限の生活動線と、スキップフロアを切り分けておくことで、万が一の場合にも生活に支障が出にくいです。
また、最近では、車椅子の場合は除き、高齢になった後も短時間の昇降運動は健康づくりに効果的という研究結果も出ています。
「インターバル・トレーニング」は、高負荷と低負荷の運動を交互に繰り返すトレーニング方法。やや早歩きのウォーキングとゆっくりとしたウォーキングを数分毎に繰り返すのが代表的だが、これに「階段昇降」を取り入れると、より効果的であることが判明した。
引用元:保険指導リソースガイド|わずか10分の「階段昇降」が実践的な運動に 階段なら続けられる
(中略)
過去の研究では、階段昇降の運動は週に70分行わないと効果がないと報告されていたが、ギバラ教授の研究では、それより少ない時間でも十分に効果を得られ、心血管性フィットネスが向上することが判明した。
ステップダウンフロアも人気
最近、スキップフロアの一種として人気が高まっているのが、「ステップダウンフロア」です。
床の一部を「掘りごたつ」のように一段下げることで、一つの空間に複数の機能を持たせられます。
また、ベンチ上にすれば、腰掛けてくつろぐスペースとしても活用できます。
「ソファーの置き場がない」「床に直接座ってくつろぎたいけど、あまり落ち着かない」「置き家具を減らしてスッキリした部屋にしたい」そんな人におすすめです。
施工事例|スキップフロアの家
私たち入沢工務店では、今まで数多くのスキップフロアがある家を手がけてきました。
そこで、その中でも特徴的な事例を紹介します。
CASE① 子供の夢広がる半地下の“秘密基地”
こちらは、玄関を入ると正面にスキップフロアがあるお宅です。
外観は2階建の住宅に見えますが、半階ごとに床を設けているため、以内部は4層に分かれています。
一層目は半地下にある子供部屋。ちょっとした“秘密基地”のような雰囲気です。
2層目には玄関ホールと水回り、3層目にはLDK、4層目に寝室を設けました。
このように、連続した空間を作るだけではなく、限られた立地で床面積を広げられるケースもあるのです。
【事例の詳細はこちらをご覧ください】
入沢工務店|施工事例|山梨県笛吹市規格住宅|スキップフロア、リビングや間取り画像を掲載
CASE② ステップダウンは家族の憩いの場に
こちらは、明るいリビングの中央にステップダウンフロアを採用した事例です。
吹き抜けから差し込む光と、パティオから連続した開放感がなんとも心地いい空間になっています。
そのまま床にごろんと寝転んでくつろぐこともできますし、段差に腰掛けててテレビを見るものいいでしょう。
このようなちょっとした“細工”で、空間の活用方法が広がります。
【事例の詳細はこちらをご覧ください】
入沢工務店|施工事例|山梨県笛吹市注文住宅|パティオのある家、戸建て建築の間取り画像も
まとめ|スキップフロア機能性+デザイン性のある家に
スキップフロアは意匠的な個性が目に留まりやすいため、どうしてもデザイン先行でプランに取り入れてしまう人は少なくありません。
しかし、それでは後から「やめておけばよかった」と感じてしまうことも…。
スクップフロアは、取り入れる場所や空間の用途によっては、メリットの大きい空間です。
だからこそ、そのメリット・デメリットを十分理解して、プランニングに活かしましょう。
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山梨で注文住宅をご検討中であれば「入沢工務店」にご相談ください
私たち「入沢工務店」は山梨・甲府エリアを中心に注文住宅の設計施工を行っている工務店です。
「住む人と、つくる人。そのお互いの顔が見える家づくりの大切さ」を常に意識しながら、お客様の理想を叶えるお手伝いをさせていただいております。
お客様一人一人に寄り添いながら少数精鋭のプロ集団で家づくりに取り組んでいますので、年間に携われる棟数は決して多くはありません。
しかし、地元の方に満足していただける工務店であり続けられるよう、お客様の声に常に耳を傾けています。
「地域の特性を生かした家にしたい」「地元の溶け込む住みやすいマイホームに住みたい」
そのようにお考えの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。